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テレビからは、初詣に集まった善男善女が生み出す喧噪とともに、重々しい鐘の音が流れてくる。
画面左下隅の時刻表示は、午後11:59。慌てて玄関に向かう。

明かりをつけ、扉を開け放つと、雨音とともに、しんとした冷気が流れ込んできた。
酒の入った身体が思わずぶるりと震える。
今夜は雨か。
見上げると、とっぷりと更けた夜空は、雨雲に覆われているせいか、地上の明かりを反射してうっすらとほの白い。
背後から聞こえるテレビの中の鐘の音に被さるように、遠くからいくつもの違った鐘の音が聞こえてくる。この地もテレビの中のどこかと同じように、今まさに年を越そうとしているのだ。

ふと、背後の『気』が動いた気がした。
暖かな空気が家の外へと吸い出されるかのように、なにかが流れ出す。
それが、歳神だということをなぜか自分は知っている。


「お世話になりました」


口の中でつぶやくと、軽くつむじのあたりをなでられたような感じがした。

同時に、家の外から鮮烈な風が吹き付ける。
先ほどまでの、暖かでとろりとした穏やかな気とは違い、冷え冷えと若々しく荒削りな気。
つまらない真似をしてみろ、すぐに帰ってやる、暴れてやる、と冷たく品定めされているよう。
思わず目が覚めて、身体がしゃんとする。


「ようこそおいでなされました」


思わず軽く頭を下げる。そのすきに、頭上を何かが通っていった感じがした。
はたして今年の歳神に我が家は気に入ってもらえるだろうか。
心ばかりのもてなしに、お飾りと鏡餅は用意したけれど。あ、お節と屠蘇も。
 
「あけおめ、ことよろ」

さて、新年最初のお出迎えはすんだ。扉を閉めて、暖かな居間へと戻ろう。

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